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 あいちゃんは あやまる。あめあがりの 水たまりに しずんでた あやしい あんぱんに。

 あいちゃんは あやまる。
「あんたを たべて あげられなくて ごめんね。」
 あやしい あんぱんは こたえる。
「むしろ、俺はそっちの方がいいんだぜ。おじょうさん」

 あいちゃんは たずねる。
「あら、それは どうして。」
 あやしい あんぱんは こたえる。
「このまま、あんも パンも水に溶ければ、俺は名前から逃れられるって算段さ」

 そのとき いちわの カラスが とんできて あんぱん くわえて とんでった。
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 空気が艶かしい存在感をもってまとわりついてくる。汗とも湿気ともつかず、頭からつま先までべとついてむず痒くなる。自分の発する熱気の一切を受け止め、内に溜め込むベッドで、何とかそれを解消しようと悶える。肩をさすり、唇を舐め、鼻をこする。瞼を開けるには重く、閉じるには熱すぎる。朝はまだ来ない。
 頭がぐらつき、思考まで湿って濡れている。だが、その正体をはかりかねた。一言では形容できない滲んだ感覚。
 ふと、それがいつの日にか既に経験していることだと気づいた。思いを馳せる。ぼやけたものに怯えを抱きながらも触れてみた。そう、それは触れる距離にある。形が徐々に作られていく。

 祈るような、切なさ。乏しくとも、探りあてたのはそんなことだった。強い意志でもなく、感傷でもない、祈り。縋りつくことさえない、祈り。ただ、祈るということ。

 鼻先を、かすめるものがあった。風だ。
 窓は開けていない。空気を動かすものは無いように思える。もう一度確かめようと手を掻いたが、分からなかった。
 だが、自然と口には笑みがうかんでいた。胸に手を置き、二度ほど撫でる。
 濡れてかすんでいるものは、だがしかし確かにそこにあり、触れる指を待っているのかもしれない。そしてそれは、濡れながら乾いた清浄さを纏っているのかもしれない。
 夜の終わりに、大きく息を吐き、瞳を閉じた。
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