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 空気が艶かしい存在感をもってまとわりついてくる。汗とも湿気ともつかず、頭からつま先までべとついてむず痒くなる。自分の発する熱気の一切を受け止め、内に溜め込むベッドで、何とかそれを解消しようと悶える。肩をさすり、唇を舐め、鼻をこする。瞼を開けるには重く、閉じるには熱すぎる。朝はまだ来ない。
 頭がぐらつき、思考まで湿って濡れている。だが、その正体をはかりかねた。一言では形容できない滲んだ感覚。
 ふと、それがいつの日にか既に経験していることだと気づいた。思いを馳せる。ぼやけたものに怯えを抱きながらも触れてみた。そう、それは触れる距離にある。形が徐々に作られていく。

 祈るような、切なさ。乏しくとも、探りあてたのはそんなことだった。強い意志でもなく、感傷でもない、祈り。縋りつくことさえない、祈り。ただ、祈るということ。

 鼻先を、かすめるものがあった。風だ。
 窓は開けていない。空気を動かすものは無いように思える。もう一度確かめようと手を掻いたが、分からなかった。
 だが、自然と口には笑みがうかんでいた。胸に手を置き、二度ほど撫でる。
 濡れてかすんでいるものは、だがしかし確かにそこにあり、触れる指を待っているのかもしれない。そしてそれは、濡れながら乾いた清浄さを纏っているのかもしれない。
 夜の終わりに、大きく息を吐き、瞳を閉じた。
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